インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「いくらなんでも、レベル1でいきなり中ボスは無理だよな。まずは最初の城とか町の周りウロウロして、弱い敵で経験値積んでレベル上げて、お金貯めて装備も整えてから次の町を目指して、またレベル上げて……って言う段階を踏んだ方がいいと俺は思うんだけど」

「だよね、私もそう思う。いきなり全滅したくないもん。じゃあ具体的にはどうしようか」

「そうさなぁ……。まずは……」

尚史は一度ゲーム機の画面から顔を上げて少し考え、少しだけ私との距離を詰めて座席に座り直した。

「これくらいかな」

「……ん?何が?」

「俺とモモは横に並んで座ることが多いじゃん。電車はもちろんだけど、外で飯食うときもカウンター席に座るし、部屋でゲームしてるときも横に並んで座るだろ?だいたいいつも30cmくらいは離れて座るから、その距離を少し詰めてみた」

なるほど、物理的な距離を縮めてみたということか。

私と尚史には暗黙の了解で確保しているパーソナルスペースみたいなものがあって、その領域は常に守られてきた。

尚史はきっと、恋人同士ならもう少しその距離が近いのではないかと考えたのだろう。

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