インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「いきなり触られたらモモだって余計に怖くなるだろうし、少しずつ慣れた方がいいだろ」

「そうだね。そうしよう」

私もいきなり尚史に押し倒されて蹴ったり殴ったりはしたくないし、名案だと思う。

キヨみたいな恋愛上級者が見ればじれったい方法かも知れないけれど、初心者の私たちには初心者向けの安全策でなければ一歩も前には進めない。

尚史はさっきゲームを始めたばかりなのに、セーブしてゲーム機を鞄にしまい、私の方に少し顔を向けた。

「それと……向かい合って飯を食うのはどうだろう」

「向かい合って?横に並んでじゃダメなの?」

「よく考えたら俺とモモは外で一緒に飯食ってるときも話すときもだいたいゲームしてるから、お互いにあんまり正面から顔を見てないなと思って」

確かに私たちは、いつもゲームをしながら会話している気がする。

ゲームをしていれば視線は常にゲームの画面に集中しているし、カウンター席に並んで座っていればなおさらお互いの顔なんか見ない。

「言われてみれば確かにそうだね」

「とりあえず外にいるときはゲームせずにちゃんと顔見て会話してみようかと」

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