インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「やっと結婚指輪はめられるな」

「『やっと』って……そんなに待ち遠しかった?」

「早くモモと同じ指輪つけたいってのもあるけど、会社で俺が結婚したって言っても、あんまり信じてもらえないんだ。左の薬指に指輪してたら、結婚してるって一目でわかるだろ?」

それは尚史に群がる虫除け的なアレか?

尚史が結婚していても関係なく誘って来る女子はいるだろうけど、尚史は結婚指輪を見せつけて誘いを断るつもりなのだな?

「モテるのも大変なんだね」

「大変って言うか、適当にあしらうのもめんどくさいから。俺はモモ以外の女には興味ないしな」

尚史は玄関の鍵をしめながら当たり前のようにそう言ったけれど、モテるイケメンを夫にするのはそれなりの覚悟がいるのだと私は思う。

これは私もうかうかしていられない。

尚史がずっと『モモ以外の女には興味ない』と言ってくれるように自分磨きをしなくては。

「あ……もう一個忘れ物」

そう言って尚史は今しめたばかりの鍵を開ける。

「また?」

今度はハンカチでも忘れたのかと思っていると、尚史はドアを開けて私を玄関に引っ張り込んだ。

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