インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「今日は寝過ごしておはようのキスも忘れてた」

尚史はドアを閉めて私の唇に軽く口付ける。

「俺がキスしたいのも好きなのも一生モモだけだから、心配しなくていいよ」

「ホントかなぁ……」

「ホントに。俺は一生モモだけを愛し続けるって今日神様に誓うから、『行ってきます』と『行ってらっしゃい』のキスもさせてくれる?」

「尚史がそこまで言うなら」

私たちは軽く触れ合うだけのキスを二度繰り返し、ギュッと抱きしめ合った。

どんなときも尚史の頭の中は私でいっぱいらしい。

それは私にとってとても幸せなことだから、これからもずっとそうあって欲しいと思う。

「それじゃあ……今度こそ行こうか、奥さん?」

「うん……」

そうか、私は尚史の奥さんになったんだ。

改めて『奥さん』なんて言われると、ちょっと照れくさくてくすぐったい気持ちになる。

玄関を出て鍵をしめエレベーターに乗り込むと、尚史は私の手を握った。

「なんか……やっぱちょっと、緊張するな」

「尚史でも緊張するの?」

「当たり前だろ。ほとんどあきらめてた昔からの夢が、今日は現実になるんだから」

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