インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
昔からって……一体いつ頃から尚史はそんな夢を見ていたんだ?

『君と結婚するのが夢だった』とか、そんな風に思ってもらえるほどのいい女でもないのに、なんだか申し訳ない。

尚史はそんな私の思いなど知るよしもなく、嬉しそうな顔をして笑っている。

「楽しみだなぁ……モモの花嫁姿……」

「あんまりハードル上げないで……。尚史、前に言ってたよ。何着たってモモはモモだって」

「ああ……あれは何着てたってモモは可愛いって意味なんだけどな。今日ばっかりは特別だろ?可愛くないわけがない」

ここまでくると完全な『モモヲタ』だ。

よく『恋は盲目』と言うけれど、尚史の目は完全にイカれているらしい。

そのイカれた目で、生涯私だけを見ていてくれたらいいなと思う。

エレベーターが1階に到着してドアが開くと、尚史は握っていた私の手をそっと離した。

「ホントはずっと繋いでたいけど、やっぱ親の前では照れくさいよな」

「それな」

ずっと幼馴染みで仲良くしていたとは言え、親の前で手を繋いでいたのなんか小学校に上がってすぐの頃までだ。

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