インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
母の話によると、その前日にテレビで見た有名人の盛大な結婚式に憧れた私は、白いワンピースと大きなケーキに大喜びして、「モモ、ひーくんと結婚式したい!」と言ったらしい。

私は光子おばあちゃんのくれた白いワンピースに着替え、ベールの代わりにレースのついた母のハンカチを頭に被り、リビングの入口から誕生会の用意をしていた部屋まで尚史と手を繋いで歩いたそうだ。

「光子おばあちゃんがすごく喜んで、いつかモモの本物の結婚式が見たいって言ったら、尚史くんがね……覚えてる?」

母が笑いながら振り返って尚史に尋ねると、尚史は照れくさそうにうなずいた。

「すごいね尚史、そんな小さいときのこと覚えてるんだ?」

「まぁ……いや……やっぱ忘れたかも……」

尚史は少し赤い顔をして私から目をそらす。

この顔は覚えてるんだな。

「じゃあお母さんに聞くからいいよ。お母さん、そのあと尚史はどうしたの?」

「ふふふ……僕が大人になったらモモをお嫁さんにするから、おばあちゃんを結婚式に招待するよ、って……言ったのよね、尚史くん?」

「えっ……ホントに?!」

私が尋ねると、尚史は恥ずかしそうにうなずいた。

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