インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
私たちはいろいろな段階をすっ飛ばして結婚したけれど、幼馴染みとして一緒に過ごした長い時間は、間違いなく私と尚史を強い絆で結んでくれていると思う。

これからは夫婦として確かな愛情を深めていきたい。

私と尚史はロビーを通り抜け、内科の処置室に向かった。

処置室1を尚史が、処置室2を私が支度部屋として使うことになっていて、それぞれの処置室のドアには、新郎様控え室、新婦様控え室と書かれた紙が貼ってある。

ドアの向こうでは貸衣装レンタルショップのスタッフが、私たちの結婚式の支度をするための準備を整えてくれているようだ。

「じゃあ、またあとでな」

「あとでね」

軽く右手をあげて控え室に入って行く尚史を見ていると、仮想カップルをしていたときの別れ際を思い出した。

それまで見たことのなかった尚史の大人っぽい言動とか、体温や息遣いを間近で感じるほどの近い距離に、いちいちドキドキしたっけな。

仮想カップルだったはずが、まさかこの短期間で本物の夫婦になるなんて、あのときは思いもしなかった。

もし私が『結婚する』と言い出さなかったら、私たちはずっと幼馴染みのままだったのかな?

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