インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
それともやっぱり何かしらのきっかけとか誰かの後押しなんかがあって、付き合ったり結婚したりしていただろうか。

『もしも』の話をいくらしたって、その選択肢を選んだ人生を見ることはできないけれど、いくつもの偶然と、私と尚史の想いが重なって、私は今、この場所に立っているのだと思う。

あんなめちゃくちゃななりゆきではあったけど、私にとって尚史との結婚は必然だったような気もする。

不思議だけど、人生って、なるようになっているのかも知れない。



それからプロのスタイリストの手によってメイクを施され、ウエディングドレスを着せられた私は、大切な人たちの見守る中、尚史と永遠の愛を誓い合った。

リナっちが奏でるエレクトーンの音がロビーに響きわたり、ここが病院であるということを忘れさせる。

ロビーには招待したみんな以外にも、入院患者やお見舞いに訪れていた人たちがたくさん集まり、未熟な私たちの結婚という人生の門出を祝ってくれた。

私たちはロビーのステンドグラスから射し込む暖かく柔らかな陽射しの元で、指輪の交換をして誓いのキスを交わした。

光子おばあちゃんは一番上等な着物を軽く羽織り、車椅子に座って、終始嬉しそうに目を細めながら私たちを見守ってくれた。

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