インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
祝福の拍手が降り注ぐ中、これでようやく尚史と本物の夫婦になれたような、そんな気がした。

式の最後に、私は手に持っていたブーケを光子おばあちゃんに渡した。

「光子おばあちゃん、たくさん可愛がってくれて、私と尚史を夫婦にしてくれて、本当にありがとう。ずっと大好きだよ」

私がそう言うと、光子おばあちゃんは少し首をかしげたけれど、その次の瞬間、昔と変わらぬ優しい笑顔で私の頭を撫でてくれた。

「こちらこそありがとう。モモちゃんの花嫁姿、本当に綺麗だったよ。尚史くんとうんと幸せになんなさいね」

光子おばあちゃんのその一言で私の涙腺は容易く崩壊した。

このさきどれくらいの時間を共に過ごせるかはわからないけれど、もし光子おばあちゃんが天寿をまっとうする日が来ても、私の中には光子おばあちゃんが大切に愛してくれた記憶が残る。

そして光子おばあちゃんにも、昔からの夢だった私と尚史の結婚式の記憶は少しでも残るはずだ。

いつか来るであろうその日を悔いなく迎えられるように、光子おばあちゃんとの間に残されたわずかな時を、これまで以上に大事にしよう。

私は光子おばあちゃんからたくさんの愛情と、大切な人と共に歩む未来をもらったのだから。



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