罪あることの荒唐
「山賊」

「あ?」

「さんぞくー」

 子どもはにやりと笑って繰り返す。わざとだなこいつ。

 男は呆れたように肩をすくめ、

「えーえ、山賊ですよ。嫌ならどっか行けよ」

「なに言ってんの。家来のくせに」

 ことあるごとに、こいつは俺を家来、家来と言う。確かに、そういう流れにはなったが、あんまり言われ続けると本当に腹が立ってくるぞ。

「ユタ」

 唐突に名前を呼ばれて向き直る。

 本当の名前はユタカなのだが、仲間からはユタと呼ばれていたため、今ではそっちが俺の名前だ。

「どうした、ツム」

 ツムの見ている道の脇に目を移す。

「これ、食べられるよ」

 雑草を指差す。

「こんなもんが?」

 ユタには他の草とあまり見分けが付かない。湯がいて食べると美味いらしい。下の方より、上の方の葉が柔らかくてえぐみもなくスープによく使われるとか。
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