罪あることの荒唐
「じーさんに教えてもらったんだ」

 懐かしむ声のあと、表情に影を落とした。黙り込むツムにユタも目を伏せる。

 行き倒れの俺を助けなければ、じーさんは死ぬ事はなかった。罪人に少しでも接した人間にも厳しい罰はくだれる。

 俺を見つけて、助けてと頼んだのはツムだ。だから、ツムは自分にも責任があるのだと感じているのかもしれない。

 俺だって、誰かに助けを願えば、助けた奴が咎めを受ける事は知っていた。けれども、俺には死ねない理由があった。

 討伐隊に追われた俺たちは全滅して、俺だけが生き残った。首領が命がけで助けてくれたから俺は死なずに済んだ。

 首領が死の間際に俺に頼んだ事を、俺は果たさなければならない。

 血まみれの手に握られた赤い石のペンダント──西の国のユリって人に、これを渡さなければ。首領の遺言だけは、絶対に──

 それにしても、罪人に殺されたと伝わっていた王女が生きていた。それだけでも驚きなのに、王室の賢者だったじーさんは死んだはずの王女と、こんな田舎町で暮らしていた。

 どうしてだ? 何かからかくまっていたのか? 罪人から? おかしな事だらけだが、ツムはまだ全部を話しちゃくれない。
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