罪あることの荒唐
王女が殺された事で罪人、全体への締め付けが強くなり今や、罪人狩りすらも許されている。
何十年も前に、たった一度だけ起こった抵抗なのに、それが現在でも罪人を作り出している。おかしな話じゃないか。
ツムは逃げろと叫んだが、馬に乗った騎士から逃げ切れる訳がない。とにかくユタはツムを草むらに突き飛ばし、囲んだ騎士団の連中を睨みつけた。
「覚悟はいいか」
問答無用かと覚悟を決める。しかし、このまま死ぬのは腹が立つ。
「俺なんか追いかけて。騎士団てのは、よっぽど暇なんだな」
「それで満足か」
勝ち誇った物言いが鼻につく。やっぱり、無駄なあがきでも死ぬ直前まで抵抗してやろうか。
剣が大きく振り上げられたそのとき──道の脇から出てきた影が、振り下ろされた剣を受け止める。
「なに!?」
「え?」
ユタは呆然と眼前にいる男を見つめた。剣を持つ腕には、その強さを物語るように筋肉の筋(すじ)がくっきりと表れている。