どうしても、キミに言えなくて。
動き出す恋


「ねぇ、五十嵐さん!」

「…」

「今日、一緒に帰らない?」

「ごめん、無理」

「即答やめて!考えてよ!」

「考えたわ。それが答えよ」

「……本屋寄らない?」

「まぁ、本屋ならいいけど?」

「マジ!?やった!」

「だけど、私…6時までには家にいないといけないから…」

「了解!」

ホッ

毎日、美崎君が話しかけてくる。それが、日課になってしまった。

「この本、面白そう!」

「…私はこっち」

「じゃあ、買ってあげる!」

「いいわ!自分で買う」

「いいから、いいから!ねっ?」

「…!じゃあ…お願いします…」

「うん!じゃあ、待ってて」

「うん…」

久しぶりだな…。ううん、はじめてか…。寄り道なんて。
美崎君の近くにいると、いろんなことを学べる。

「お待たせ!はい!」

でも…恋はしちゃいけない。

「ありがと…」

「うん!」

でも、思ってしまう。彼ともっと一緒にいてみたいって…。

「じゃあ!またね!」

「うん、ありがと」

彼と会うのは、最後がいい。
じゃなないと、好きになってしまう…。

「…ごめんなさい…」

『五十嵐さん!じゃあ、またね!』

「…っ!」

私は、恋なんてしちゃいけないのに…。
でも、この気持ちはとめられない!
私、美崎君が好きだ…!

「お母さん、私が…恋したらダメだよね?」

「相手のことを考えなさい。傷つくのは相手なんだから」

「うん…」

やっぱり…そうだよね…。

「でも…」

パッ

「相手もあなたのこと、すきだったんなら、いいんじゃない?」

「…っ!」

そっか…。受けとめてくれるか、わからないけど、そっか、そうだよね!

「…お母さん、ありがと!」

「っ!?」

パタパタ

「久しぶりに笑ったとこ見た…」

この恋は…諦めなくてもいい!
恋って…こんなにも、自分を強くするんだ!

「美崎君!」

「っ!五十嵐さん!?どうしたの?五十嵐さんから声かけてくれるなんて…嬉しい!」

ドキッ

「…///」

やっぱり…好きだな… 彼のこと…

「美崎君、私のこと、好き?」

「えっ!?急に何!?」

「お願い、答えて!」

「…好きじゃ…ない」

ドクンッ

「そっか、ありがと…」

「でも、何で?」

「ごめん、先行くね」

ダッ

『好きじゃ…ない』

好きじゃない…か…。

ポロポロ

『それなら無理だよ。私…付き合わないから』

自分で言ったんじゃん。
傷つく資格なんて…ない…。でも…辛いな…

「五十嵐さ…」

フイッ

「…!?」

ごめんなさい、美崎君。
私…どういう顔して会えばわからないし、なに話したらいいのかもわからない。

「…っ!五十嵐さ…っ」

ごめんなさい、美崎君。好きにならなきゃよかった。

「…うっ、あぁ!うぁぁぁ!」

叫ぶの、何年ぶりだろう?
こんなにも、胸が痛いんだね、失恋って…。


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