未来の約束
俺、この男に名乗ったっけ?


「手術前、美和が記憶を失う前に、アルバムを作ってたんだ。そこに、君の名前があったから。違った?」

「あ、いえ。あの、俺も名前教えて貰って良いですか?」

「樋口洋祐」


樋口さんが支払いをし、一緒に店を出た。


「ご馳走さまでした、樋口さん。それと、ありがとうございました」

「律儀だね、君。美和には勿体ないくらい、良い男だ」

「いえ」


樋口は軽く、肩を叩く。


「美和に、負けるなよ」


その言葉に小さく頷き、樋口さんと別れた。

そして、その足で美和の元へと向かう。

樋口さんの言葉に、不安がないと言ったら嘘になる。

でも、「会わない」と言う選択肢はなかった。

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