未来の約束
「俺さぁ、ここで美香にプロポーズしたんだよ」

「そうなんだ」

「美香を助けたいと思って、医師になって、見たくもない医療の限界知って、挫けそうになった時期もあった」


きっと、その時の痛みは、とてつもなく大きなモノだっただろう。

美香さんを失い、今も尚、美香さんを求め続ける樋口は、本当に幸せだと言えるのだろうか?


「ねぇ、樋口。もう、辞めちゃいなよ。自分の為に、自由に生きても、誰も咎める人なんて居ないよ?」

「お前、本当にわかってねぇんだな」


樋口は、穏やかな笑みを浮かべる。


「俺は自由に生きてるよ。無理してるわけじゃねぇ。俺が、ただ美香と一緒に生きてたいだけだから」


健気過ぎて、こっちが泣きたくなる。

< 155 / 189 >

この作品をシェア

pagetop