未来の約束
チュッと名残惜しそうなリップ音が、やけに室内に響く。


「俺は、お前が好きだ」


桐島の口から放たれた言葉は、真っ直ぐにあたしの胸に突き刺さる。


「だから俺は、お前との噂なら大歓迎。それに、それが事実になるなら万々歳だ」

「・・・なんで、あたしなんですか?」

「お前だから」


あたしの問いに、桐島は「答え」とも言えない返答をする。

桐島が穏やかに優しそうな笑みなんて浮かべるから、反抗したいのにできない。

愛されることは、幸せなことだと思う。

だけど愛された分、その愛を返せる自信がない。

だから一線を引き、幸せになりたいと心のどこかで思いながらも・・・

あたしは病気を言い訳に、恋をすることを諦めた。

< 51 / 189 >

この作品をシェア

pagetop