世界No.1の総長と一輪の花



「雅。ちゃんと聞け」


詩優の言葉に雅さんは少し口角を上げる。


「詩優がぁ~雅の家に来てくれるんだったらちゃんと話聞いてあげてもいいよ?」


……え……


詩優は少しの沈黙の後、「はぁ…」とため息をついて


「わかった」


と口にした。


「ほんと!?じゃあ今から行こ!!」


ぐいっと詩優の腕を引っ張って歩く雅さん。



二人を見ていると胸がズキズキして苦しい……
もし行かないでと言えたなら詩優は行かないでくれるだろうか……


私には何もすることができなくてただ2人の背中を見送ることしかできない。





「詩優」





2人の後ろ姿に声をかけたのは京子だった。雅さんと詩優は振り向いて足を止める。



「今日は花莉私の家に泊まってもらうから。あんまりこの子に寂しい思いさせると私がもらっちゃうからね。

気をつけて、詩優」



にこりと笑う京子にまっすぐ見つめて返す詩優。



「…わかってる」



「ならいいわ」



詩優は雅さんの腕を振りほどいて、歩き出す。雅さんも「待ってよぉ」とすぐにあとを追いかけていく。



私はまた2人の背中を見送った。




< 122 / 599 >

この作品をシェア

pagetop