世界No.1の総長と一輪の花
「雅。ちゃんと聞け」
詩優の言葉に雅さんは少し口角を上げる。
「詩優がぁ~雅の家に来てくれるんだったらちゃんと話聞いてあげてもいいよ?」
……え……
詩優は少しの沈黙の後、「はぁ…」とため息をついて
「わかった」
と口にした。
「ほんと!?じゃあ今から行こ!!」
ぐいっと詩優の腕を引っ張って歩く雅さん。
二人を見ていると胸がズキズキして苦しい……
もし行かないでと言えたなら詩優は行かないでくれるだろうか……
私には何もすることができなくてただ2人の背中を見送ることしかできない。
「詩優」
2人の後ろ姿に声をかけたのは京子だった。雅さんと詩優は振り向いて足を止める。
「今日は花莉私の家に泊まってもらうから。あんまりこの子に寂しい思いさせると私がもらっちゃうからね。
気をつけて、詩優」
にこりと笑う京子にまっすぐ見つめて返す詩優。
「…わかってる」
「ならいいわ」
詩優は雅さんの腕を振りほどいて、歩き出す。雅さんも「待ってよぉ」とすぐにあとを追いかけていく。
私はまた2人の背中を見送った。