世界No.1の総長と一輪の花
帰りのホームルームが終わったら詩優はすぐに迎えに来てくれた。いつも通り康さんの車に乗ると、詩優が心配そうな表情をした。
「…大丈夫だった?誰かに何かされたりとか、絡まれたりとか……」
「大丈夫」
詩優がそこまで心配するようなことは何もない。ただ女の子たちに質問攻めにあっただけで…
「男に呼び出されたりしてない?触れられてない?近づかれてない?」
一気に質問が3つ。
そこまで心配なのだろうか……私は本当に大丈夫なんだけど…
「…大丈夫」
ぽんぽんと私の頭を撫でてくれる。その手が温かくて安心感を与えてくれる。魔法の手かもしれない。
「万が一何かあったらすぐに俺に言って」
素直に頷いた私。でも何かあることなんてないと思いたい。
「お前みたいな小動物、すぐに攫われそうで怖い」
呟くように、静かに届いた声。
っていうか小動物って………
「知らないやつには絶対ついて行かないこと。これ絶対な。お菓子あげるって言われてもついて行くなよ?」
「……私そこまでバカじゃないもん」
「ついて行きそうなんだよ」
…さすがにそんな怪しいこと言われたら絶対ついて行かないのに…
「アイス買ってあげるからこっちおいで」
隣に座ってるのに手を広げておいでという詩優。私はまるでペットになったかのようだ…
その時ちょうど思い出したのは以前詩優に問い詰められた時に溶けてしまったアイス。あのあとの再度冷凍庫に入れたアイスはカチコチしてて本来のアイスの美味しさを少し失っていたんだ。
そのアイス、詩優はまた買ってくれるって言ってたっけ………
「ほんと?」
詩優の瞳をそっと覗き見るようにすると、「ほんとほんと」と答えてくれる。