世界No.1の総長と一輪の花
昼休み、教室まで迎えに来てくれた詩優に念のために手紙のことを伝えた。
「へぇ?」
と口角を上げて足を止める詩優。
「よーし、今行こ。俺が威嚇してやるから」
ぐるりと行き先を変えて私の手を取って歩き出す。
「え?え?」
威嚇?脅すの?誰かもわからないのに…?
どんどん体育館裏に足を進めると、1人でここに来なくてよかったと思った。
だってそこには…
10人くらいの男の人たちが待っていたから。
「あーあ。雷龍の姫ならすぐ捕まえられるって言ったのは誰だよ」
「お前だろ?っていうか最悪だろ。総長まで来てんぞ」
男たち声が聞こえる。
「あんたらどこの族?」
詩優が落ち着いた声を出すと、煙草を吸っている男が立ち上がった。
「"鳳凰"って言ったらわかる?雷龍の総長さん」
ほうおう…?
「…鳳凰はお前らみたいなチンピラいんのか。どうせ独断だろうけど」
詩優はため息をついてから、「俺の後ろにいて」と小さな声で言った。
「チンピラだと?」
何人かが詩優に向かって拳を奮う。けどそれをさらりと避けて脇腹に1発ずつ自分の拳を入れる詩優。
…やっぱり強い……
3人地面にドサリと倒れた。
「他にもかかってこいよ」
挑発する詩優だけど周りの人たちは青ざめた顔をして、他には誰も立ち向かって来なかった。
「次、花莉に手ぇ出したら命はないと思え」
低く、静かに言う詩優。私でもゾクリと背筋が凍ってしまうほどの声だ。