世界No.1の総長と一輪の花
*
「詩優様~!今夜、どうですか?」
「いいえ!私と大人の遊びしましょう?」
「詩優様、これからどこに行かれるんですかぁ?」
夜の繁華街に行けばたくさんの女たちが腕を絡ませてきて、甘い声で誘ってくる。
"世界No.1の暴走族"だから媚を売ってきたり、近づいてくる人間はたくさんいる。それがめんどくせぇ。
俺のことよく知らねぇくせによくこういうことできんな……
俺の体にベタベタ触れてくる女たちの手を振り払って、足早に歩いた。
「詩優。こっちだ」
キラキラ光る繁華街を少し歩いたところ、バーの前で竜二が待っていた。
数時間前、竜二から
"会わせたい奴がいる。いつものバーに来い"
とメールが入っていたんだ。
…会わたい奴って誰だ?
なんて思いながらバーに入った。
「久しぶりだな詩優。それにしても随分とでかくなったなー」
ここのバーの店主である栗色の髪の諏訪部 棗(すわべ なつめ)さん。棗さんは雷龍の先々代の副総長だった人だ。
棗さんは24歳で、バーのイケメン店主と呼ばれている。ちなみに、既婚者で娘もいる。
「お久しぶりっすね、棗さん」
俺がそう言うと、カウンターの隅っこでビクッと肩を震わせて小さくなっている学ランを着た黒髪の男がいた。
その学ランに見覚えがある。奏太と壮と同じ学校の制服だ。
…中学生か。