世界No.1の総長と一輪の花
ぎゅーっとさらに強く抱きついて、私は目を瞑った。
今の心に余裕なんてものはないから。外の景色も見てられない。
それからしばらくバイクは走って、やっと止まった。
そこは潮の香りがして、ゆっくり目を開けてみると……海が見えた。
すっかり日も暮れていて、夜の海。
「大丈夫だったか?」
詩優に声をかけられて、私はすぐに抱きついていた手を離した。
今でも心臓がバクバクいってるけど、とりあえず頷いておいた。被っているヘルメットをはずしてもらって、詩優に抱きしめられた。
「大丈夫って顔してねぇな」
詩優の大きな体にすっぽりとおさまる私。バクバクしていたはずの心臓も少しずつドキドキに変わってきて、そのまま詩優の背中に手を回した。
「おーい!!そこの2人~!!いちゃついてないで早く花火しよーぜーーー!!!!!」
少し遠くから聞こえてくる倫也の声で、私は慌てて詩優から手を離した。
……見られた…
っていうか…花火って言った?今……
まだ夏じゃないのに。