世界No.1の総長と一輪の花
冬樹くんは以前『絶対髪染めない』と言っていたのを聞いたことがある。
「そんなに信じられないなら花と俺のドキドキの思い出でも言ってやろうか!?」
"ドキドキの思い出"!?
「そんなのないもん!!」
「花の誕生日は12月24日。血液型はB型。2歳上の兄と父の3人暮らし。ヤキモチ焼きでとっても泣き虫。でも笑顔が天使。2年前の夏祭りデートでアイスを落として大号泣」
ペラペラと話した男の人。2年前の夏祭りのことは冬樹くんしか知らないはず……
だって冬樹くんと2人で行ったんだから……
「……本当に……冬樹…くん?」
「そうだよ……2年間、1人にしてごめんね……」
冬樹くんは悲しそうな声で謝ると、さっきよりも力を込めてぎゅーっと私を抱きしめた。
私のお母さんが亡くなってから、冬樹くんは私と一切会わなくなった。どんなに辛くても、どんなに会いたくても、冬樹くんが2年間私に会いに来てくれることはなかった。
頬に涙が伝う。