世界No.1の総長と一輪の花





「……冬樹…くん…っ……」

「花…お前、家に行ったらいないし…今までどこにいたんだよ…!」




「…親切で…優しい人のところにお世話になってる…」

「花、今すぐ俺と…」






「今すぐその手、離せ」






低い声がその場に聞こえて、一瞬だけ動けなくなった。抱きしめられたままで顔は見えないけど、間違いなく詩優の声だ。




ゆっくり離される私の体。そしてぐいっと詩優に手を引かれて、詩優の背中に誘導された。





一瞬だけ見えた詩優の表情はすごく怒っていて……私は慌てて




「い、従兄弟なの…っ!!」




と言って詩優の袖を引っ張った。





「……花、噂は聞いてたけど本当だったんだね……もしかしてそいつに脅されてるの?」


「脅されてなんてない!詩優はすごく優しいもんっ!!」




私がそう返したところで、康さんの車が到着。




詩優は無理矢理私の手を引くと、車のドアを開けて私を押し込む。




「康、花莉を頼む」




それだけ詩優は言うと、車のドアを閉められてすぐに発車した。そ 外からは冬樹くんの声が聞こえてきたけど、次第に遠くなって行った。








< 272 / 599 >

この作品をシェア

pagetop