世界No.1の総長と一輪の花
「……冬樹…くん…っ……」
「花…お前、家に行ったらいないし…今までどこにいたんだよ…!」
「…親切で…優しい人のところにお世話になってる…」
「花、今すぐ俺と…」
「今すぐその手、離せ」
低い声がその場に聞こえて、一瞬だけ動けなくなった。抱きしめられたままで顔は見えないけど、間違いなく詩優の声だ。
ゆっくり離される私の体。そしてぐいっと詩優に手を引かれて、詩優の背中に誘導された。
一瞬だけ見えた詩優の表情はすごく怒っていて……私は慌てて
「い、従兄弟なの…っ!!」
と言って詩優の袖を引っ張った。
「……花、噂は聞いてたけど本当だったんだね……もしかしてそいつに脅されてるの?」
「脅されてなんてない!詩優はすごく優しいもんっ!!」
私がそう返したところで、康さんの車が到着。
詩優は無理矢理私の手を引くと、車のドアを開けて私を押し込む。
「康、花莉を頼む」
それだけ詩優は言うと、車のドアを閉められてすぐに発車した。そ 外からは冬樹くんの声が聞こえてきたけど、次第に遠くなって行った。