世界No.1の総長と一輪の花
「戻って、花莉。会場に着いたら離れんなって俺との約束だろ」
手招きをして私を呼ぶ詩優。
"会場に着いたらくっついてて"と言われただけだし、それは約束とかじゃないと思うんだけど…
っていうか今それを言うのはずるくないか……
私は詩優と竜二さんのこと…知らなかったから驚いただけなのに…
「……何で今まで教えてくれなかったの?」
せめてそれだけでも教えてくれたら…言う通りにしよう。
「家のことは話したくなかった」
そう答えた詩優。そういえば以前一人暮らしを始めた理由を聞いたら……
"家が嫌いだから"
と言っていた。
それに詩優は家のことを話そうとしないし……
私が触れちゃいけないこと…だよね…
「…ごめん。あとで詳しく話すから」
そう言った詩優はしょんぼりしていて、なんだか怒られている子犬みたいだ。
…可愛い
別に怒ってないのに…
そっと詩優のところに戻ろうとしたら、急に腰が抜けた。
え……
地面に座り込む寸前で、
「…あっぶねぇ」
詩優に腰を抱かれて支えられた。