世界No.1の総長と一輪の花










それにしても疲れた。
注目を浴びながら会場を歩いたり、声をかけられたり……全部詩優が対応してくれたけど……





本当に疲れた。




せっかく美味しそうな食事もろくに喉を通らず……お腹も空かなかった…
むしろ見られすぎてお腹いっぱい。




「…はぁ……」




化粧室の鏡の前で思わず出たため息。詩優はいったい何のために私をここに連れてきたのか……

全然わからない。










…詩優が心配するからもう戻らないと……





化粧室から出ると、小太りの丸メガネをかけた男性が待ち構えていた。





…誰か待ってるのかな……





女性の化粧室の前で異性が待つのはあまり気持ちのいいものでは無いけど……





見て見ぬふりをして小太り男の前を通り過ぎようとしたら





「…………で……る…?」





小さな声がぽつりと聞こえてきた。あまりにも小さな声ではっきりと全部聞き取ることはできなかった。





…この人…今…私に何か言った?思わず足を止めてしまった。





でもすぐに足を止めてしまったことに後悔した。





「…いくらで買い取れる?」




って声が確かに私の耳に聞こえてきたから…



< 310 / 599 >

この作品をシェア

pagetop