世界No.1の総長と一輪の花
「触んな」
部屋の中に、ある人物の低い声が響く。
大好きな人の声が…
私に触れていた男の手を振りほどいて、自分の方にぐいっと引き寄せる。
私はあっという間に詩優の腕の中におさまった。
途端に恐怖が安心感へと変わる。
「俺ぁ客だぞ~」
酔っ払ったおとこはふらふらしながらそう言ったが、詩優は特に焦ることもせず
「お前みてぇな客はいらねぇ」
と冷たく吐き捨てた。
そのあと酔っ払いの男は何かを言っていたが、詩優はそれを全て無視して私の手を引いて部屋を出る。
エレベーターをおりて、地下1階へ。
黒いスーツに、オールバックの髪。いつもの赤いピアスは耳にはしていない……
「このアホ!!!」
…すごく怒っている詩優。
「何で全力で抵抗しねぇんだ!!」
「…ごめ、なさ………」
ここの従業員としてバイトをしている以上、お客さんに対してどこまでしていいのか…わからなかった……
というのは言い訳になるだろうか…