W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
「…ちゃん、静香ちゃん」

「ん・・・」

ゆすられて目を開けるとドアップの涼月が目の前にいてびっくりして目が覚めた。

「なっ?え、ここは?」

一瞬どこにいるのかわからなくてきょろきょろと見回す。
車の助手席を開けて顔を覗き込んでた涼月は笑いながら手を出してきた。

「俺んち、さ、降りて」

「え、なんで涼月さんの家…」

差し出された手を掴むと車から引っ張り出された。

「今日から静香ちゃんはうちに泊まってもらう」

「えっ!?そんな!」

「大丈夫大丈夫!静香ちゃんがいいって言うまで何もしないから!ゲストルームもあるし、鍵もついてるから安心!俺は安全だよ~」

にこにこと調子のいいことを言って、静香の肩を抱いてエレベーターへ向かう。
言い出したら聞かない…か。はあ、とため息をついて諦めた。
その夜は女性物の化粧品や下着まで用意されてるのにびっくりしながらもお風呂を頂いて、早々に部屋に籠りベッドに入った。
最近眠れなかったのに車の中で眠れたので、ちょっと体が楽になったと感じながら目を閉じた。
でも、閉じたとたんに浮かんでくるのは梗月の悲しそうな憂い顔。
やっぱり眠れずに何度も寝返りをうって朝を迎えた。

冴えない頭を振って何とか起き上がるとこっそりドアを開け涼月の気配が無いことを確認して顔を洗いに行き、化粧品を有り難く使わせてもらって部屋に戻った。
クローゼットに服は用意してあるからと言われ開けてみると、スーツから普段着までズラッと服が並んでいた。

「え、これ、着ていいの?」

どれも高級そうな服ばかり。恐る恐る手に取ってタグが付いてるままになっていて恐れおののく。

「高っ!どどど、どうしよう」

服を戻し、下着のままウロウロと部屋を歩き回っていると、コンコンとノックの音がする。

「静香ちゃん?起きてる?朝食の用意が出来てるけど」

下着だったことを思い出しベットに飛び込むとシーツを体に巻き付ける。

「あ、あの、この服、私が着てもいいんでしょうか?」

恐る恐る聞いてみると、くくくっと笑い声。

「どれを着てもいいよ。静香ちゃんのために用意したんだから。あ、しいて言うなら一番右端のピンクベージュのスーツを着てほしいなあ、絶対静香ちゃんに似合うと思うんだ」

「ピンクベージュ…」

「じゃ、着替えたらおいでよ~」

遠ざかる声を聴いてのそのそとベットから這い出し、言われた通りピンクベージュのスーツを取ってみる。

丸襟のツイード素材で、下はフレアスカート。
可愛すぎる感もあるけど落ち着いた色合いで一目見て自分も気に入った。
袖を通し、着心地のいい感触に感動して鏡の前で一回転する。
いつもは地味なシンプルなスーツしか着たことが無いから、華やかな色合いのスーツに顔を赤らめる。
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