W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
自分も車に乗り込み後ろを向くと、目を瞑ってる梗月に話しかけてみる。

「梗月さん、大丈夫ですか?具合悪くないですか?」

「う~ん、だいじょうぶぅ~…」

声は聞こえてるみたい。何とも間延びした返事をする。
もう、と呆れてため息をついて、梗月のマンションへ向かった。

駐車場に付き、後部座席に行って梗月を起こす。

「梗月さん!起きてください。マンションにつきましたよ!起きてくれないと私梗月さんを運べません!」

静香は身長155cmの小柄な体格。さすがに178cmの大きな梗月を抱えて歩けない。

「う~ん、おはよう、しずかくん」

まるで子供のように目をこすりながら起き上る梗月にキュンときめきながら手を引っ張り車から出した。
まだよろよろ歩く梗月の腕を自分の肩に回し支えながらホールに入ると男性のコンシェルジュが駆け寄ってきてくれた。

「本郷様、大丈夫ですか?お手伝いしますよ」

「あ、ありが…」

「大丈夫です。ちょっと酔ってるだけなんで」

静香がお礼を言って、手伝ってもらおうと思ったのに、梗月は急にシャキッと立って申し出を断った。
はあ?っと梗月を見上げると「さ、行くよ」と静香の肩を抱いたままエレベーターへ向かう。

「え?え?梗月さん?」

訳も分からずされるがまま、すぐに開いたエレベーターに乗り込んだ。

「梗月さん、ちゃんと歩けるんなら部屋まで自分で行けますよね?わっ、おもっ!」

まだ肩を抱いたままの梗月に文句を言うと、また重みがのしかかってよろけた。

「そんなこと言わないでよ、さっきのは結構頑張って歩いてたんだ…」

「何をそんな見栄を張るようなことをするんですか、重いですよ!」

のしかかる体重を支えながら文句を言うと、担いだ腕に抱き寄せられ横の壁に梗月が背を預ける状態になり包まれた。

この状態…、えっ?完全に抱き締められてる!?

アワアワしながらももがくと余計に腕に力が入る。

「きょ、梗月さんっ?」

声が裏返りながら叫ぶ。顔が熱い、きっと真っ赤だ。

「ああ、静香くんはすっぽりと腕に収まるね、抱き心地がいい…」

「抱き心地って…」

言葉に詰まって黙ってしまう。
そのまま、最上階につくまでほんの数秒だと思うけど永遠に長い時間に思えた。
梗月に抱き締められたことなんて初めてだ。
嬉しい…に決まってる。
心地いい腕の中で目を閉じた。

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