身代わり令嬢に終わらない口づけを
「お嬢様! やっぱり秋祭りに来ていたのですね! お探しいたしましたよ! 今まで一体どこに……!」

「だから言ったじゃない。駆け落ちだって」

 そう言ってベアトリスは、背後にいた先ほどの青年を振り返った。青年もその視線を受けてにこりと笑う。どうやら二人は知り合いだったらしい。


「駆け落ちって……あれ、冗談じゃなかったんですか?」

「私が冗談で駆け落ちなんかすると思って?」

 思った、とは言えない。ベアトリスなら、冗談で本当に駆け落ちくらいしかねないということを、ローズは自身の経験からよく知っていた。

 ベアトリスは、困ったように首をかしげる。
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