身代わり令嬢に終わらない口づけを
「でも、私この人と結婚すると決めてしまったの」

「うん、トリスは僕のものだ。誰にもあげないよ」

 ベアトリスの背後に立った青年は、愛し気に彼女を背中から抱きしめてその頭に口づけを落とす。その唇にくすぐったそうにベアトリスが笑う姿は、仲睦まじい恋人同士そのものだ。

 ローズは、ベアトリスが本当にこの青年に恋をしていることをその姿から察した。


 どこでどうしているかずっとベアトリスの身を心配していたが、幸せそうなその姿にローズはようやく安堵の息を漏らす。けれど、それですべての問題が解決したわけじゃない。

 複雑な顔になったローズに、ベアトリスはあっけらかんと言った。


「だからローズ、このままレオン様と結婚しちゃわない?」
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