身代わり令嬢に終わらない口づけを
「……は? なに馬鹿なこと言ってるんです?!」

「でも、ローズはカーライルのレオン様のことが好きなんでしょう?」

「なっ……!」

 とりつくろう間もなく、ローズの顔が薄暗い中でもわかるくらい赤く染まった。それを見てベアトリスが笑う。


「ほら、ね」

「レ、レオン様はとても素敵な方です! でも、恐れ多くも私がそそそそそそそそんなこと……!」

「さっき一緒にいた方がレオン様なんでしょう? 二人の雰囲気はどう見ても恋人同士そのものだったわよ?」

「見てたんですか?! なら、さっさと声をかけてくれればよかったのに!」

「やあね、私そこまで野暮じゃないわよ」

「! ど、どこからどこまで見て……」

「うふふふ」

 にやありとベアトリスがご令嬢らしくない笑みを浮かべた。ちょっと見ないうちに、やけに庶民臭くなっている。
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