身代わり令嬢に終わらない口づけを
「ウェディングドレスを試着した時の顔は、本当のお前の顔だったのだな。俺は、あの姿のお前を美しいと思ったのだぞ? だから、その素顔を見せるのは、俺だけにしておけ」

 レオンの言葉に、ローズは顔を真っ赤にして黙り込む。


 あの祭りの日、ローズとベアトリスとハロルドの三人は、半狂乱でローズを探し回っていたレオンを捕まえてこっそりと館へと戻った。

 そこで兄弟はあらためて感動(かどうかはわからないが)の再会を果たし、好き勝手放題だった兄は、弟にこっぴどく叱られることとなった。どれだけ文句を言っても珍しく気持ちの収まらないレオンだったが、ベアトリスが笑顔でハロルドの頬をひっぱたくのを見て即座に口を閉じた。

『わたくしまで騙していたのですね?』 

 あれほど恐ろしい女性の笑顔を、レオンもローズも見たことがない。

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