身代わり令嬢に終わらない口づけを
『私たちで、なんとかベアトリスを探し出す。だから、先にベアトリスとして公爵家に行っていてくれ』

 ベアトリスは知られていないつもりだったが、とっくに娘の身代わりなど身内にはバレているのだ。

『む、無理ですよ! だいたいお迎えはもう着いちゃっているんですよ? 旦那様だって行かないわけにはいかないではないですか』

『だからこそ、その迎えを手ぶらで帰すなどということはできないのだ! 私たちのことは、結婚式に出席予定だった伯母が体調を崩して私が妻と一緒に迎えに行かなければならなくなったと、公爵には伝えておく。結婚式まではあと十日。その十日の間に、なんとかトリスを探し出す。それまで公爵家でお前がトリスのふりをしていてくれ』

『伯母様って、クリステル様はとっくに……』

『おはよう、トリス!』

 ちょうどその時、部屋の扉が勢いよく開いて当の本人が現れた。
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