身代わり令嬢に終わらない口づけを
『いい天気でよかったわね。トリスに似合いそうな帽子を持ってきたの。どう、これ? 素敵でしょ? もうすぐ出立の時間よね。なんなら私がドレスも選んで……トリスは?』
きょとんと帽子を手に伯爵とローズを交互に見つめるのは、リンドグレーン伯爵の姉、クリステルだ。
銀に近い金髪を優雅に結い上げて背筋を伸ばしたところは、ベアトリスの印象と非常によく似ている。
自由奔放に生きてきたクリステルは、早く結婚しろとの周りの意見もまったく聞かずに何人もの貴族と浮名を流した挙句、誰にも嫁がないまま歳をとってしまった。今でも変わらないその美しさは、若い頃はどれほどだっただろうかと見る人にしばしばため息をつかせるほどだ。
今は、田舎の方にある伯爵家の一部をもらい受けてそこの領主を務めている。
きょとんと帽子を手に伯爵とローズを交互に見つめるのは、リンドグレーン伯爵の姉、クリステルだ。
銀に近い金髪を優雅に結い上げて背筋を伸ばしたところは、ベアトリスの印象と非常によく似ている。
自由奔放に生きてきたクリステルは、早く結婚しろとの周りの意見もまったく聞かずに何人もの貴族と浮名を流した挙句、誰にも嫁がないまま歳をとってしまった。今でも変わらないその美しさは、若い頃はどれほどだっただろうかと見る人にしばしばため息をつかせるほどだ。
今は、田舎の方にある伯爵家の一部をもらい受けてそこの領主を務めている。