身代わり令嬢に終わらない口づけを
「? ……これは?」

「先ほど渡すのを忘れていた」

「私に、ですか?」

 めんくらってローズはレオンを見上げた。

「他に誰がいる」

 理由はわからないが、どうやらベアトリスへの贈り物らしい。


「あ、ありがとうございます……」

 明るいピンク色のバラだった。ざっと見て、二、三十本ほどはあるだろうか。困惑するローズから視線を外したレオンは、あちらこちらを見ていて一つの荷物に目をとめた。

「あれはなんだ?」

 その視線を追ったローズは、しまった、とほぞをかんだ。それは、令嬢らしくない持ち物だ。

「……トラヴェルソです」

「お前が吹くのか?」

 驚きを含んだ声で、レオンが聞いた。
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