身代わり令嬢に終わらない口づけを
「あ! お嬢様!」
ローズは、こそこそと裏口から部屋へと向かっていた背中を見つけて、彼女を捕まえようと走り出す。せっかく見つけたのだ。ここで逃がしては大変だ。
声をかけられた女性は一瞬硬直した後、観念したのかその場で振り向いた。
「あら。何か用かしら、ローズ」
「用かしら、じゃありませんよ! また勝手に私の服を着て館を抜け出していましたね!」
「……ちょっとお茶をしてきただけよ」
息を切らして追いついたローズに、ベアトリスは涼しい顔で言った。
「お茶って……仮にもリンドグレーン伯爵令嬢ともあろうお方が、共の侍女もつけずにお一人で街歩きなど……危ないのでおやめくださいと何度も言っているでしょう。だいたい、今日の午後はハープのレッスンが入っておりましたよ?!」
「まあ、そうだったかしら」
とぼけた顔のベアトリスを、ローズはぎりぎりとにらみつける。
ローズは、こそこそと裏口から部屋へと向かっていた背中を見つけて、彼女を捕まえようと走り出す。せっかく見つけたのだ。ここで逃がしては大変だ。
声をかけられた女性は一瞬硬直した後、観念したのかその場で振り向いた。
「あら。何か用かしら、ローズ」
「用かしら、じゃありませんよ! また勝手に私の服を着て館を抜け出していましたね!」
「……ちょっとお茶をしてきただけよ」
息を切らして追いついたローズに、ベアトリスは涼しい顔で言った。
「お茶って……仮にもリンドグレーン伯爵令嬢ともあろうお方が、共の侍女もつけずにお一人で街歩きなど……危ないのでおやめくださいと何度も言っているでしょう。だいたい、今日の午後はハープのレッスンが入っておりましたよ?!」
「まあ、そうだったかしら」
とぼけた顔のベアトリスを、ローズはぎりぎりとにらみつける。