年下の部下がぐいぐい押してくるんだけど!?
「柏原課長がですよ」

「は?
十も年上の女捕まえてなに言ってんの?
……イタッ」

動揺してシャーペンをかちかちさせようと思いっきり押したら、ペン先の方だった。
指先に鋭い痛みが走り、思わず顔をしかめる。

「大丈夫ですか?
血、出てるじゃないですか」

私の右手を取り、大宮が親指を口に含んだ。
なにか言おうと口を開くんだけど、一向に言葉は出てこない。

親指の先がドクドクと脈打つ。
そして、それがまるで移ったかのように心臓も。

「止まったかな」

ちゅっ、指先に唇をつけ、大宮が離れた。

眼鏡の奥の目を細めて私を見る大宮に耐えられない。
どきどきと心臓の鼓動が速いが、これはきっと、いま指先を怪我したから。
なんかさっきから変な気分だけど、ただの吊り橋効果、で。
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