ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
あの後、私なりに調べてみてわかったのは。
お義父さんの会社がうまくいってないのは、事実だってこと。
契約合意直前に相手企業が翻意したり、
プロジェクトに不備が見つかって頓挫したり……
マイナスの出来事が立て続けに起こって、そのせいで株価も下落してるみたい。
やっぱり私たち……別れるしかないんだろうか。
――非情なことを言うようですが、あなたには黙って身を引いていただきたいのです。もっと申し上げれば、彼を振っていただきたい。後ろを振り向かずにすむように、未練など欠片も残らないほど、きっぱりと。
きっぱりと……何を言えばいいんだろう?
別れたい?
そんなセリフだけで、納得してくれるとは思えない。
じゃあ、何か適当な理由をでっちあげれば……って。
散々考えても、答えは見つからない。
だって、彼を振るなんてできるわけない。
大好きな人に別れてほしいなんて、そんなこと――
「お客さん、こちらでいいですか?」
運転手さんの言葉で顔を上げると、いつの間にか見覚えのあるプレハブの建物が前方に見えていた。
「はい、その角のところで停めてください」
樋口さんたちに先にタクシーを降りてもらい、精算をすませた私も後に続いた。