ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「まだ続いてるんでしょ、2人って?」

何しろ、私をフッて付き合い始めた相手だ。
幸せになってもらわないと、私の立つ瀬がない。

ちょうど目当てのボウルを見つけた私は、彼の返事がないことにも気づかないまま、棚へと手を伸ばした。

若干届かない……と、背伸びする私の背後から、雅樹の手がひょいっとそれを取ってくれる。

「ありが……」

彼はライアンほど背が高くない。
そのせいか振り向いた時、より至近距離に顔があって、ドキリとした。

記憶を刺激する、懐かしいムスクの香り。
ちょ、ちょっと近すぎるかも……

「顔、赤くなってないか?」

揶揄うようにニヤリと覗き込まれて、ガタッと後ずさる。
「どどど、どこがっ? もう変な事言ってないで――」


コツン……


ん? 足音?


「遅いから手伝おうと思ったんだけど。必要なかった?」


冷ややかな声は、ライアンだった。


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