ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
けれど。
1週間経っても、僕の腕の中で彼女の身体は硬いまま。
体を寄せ合っているのに、なぜかひどく寒くて。
このままずっと、彼女の気持ちを取り戻せなかったらと、らしくもない焦りが募るばかりで……
なのに。
なのに、だ。
スタジオで見かけたのは、楽しそうに笑う飛鳥。
ちょっと待ってくれよ。
僕が君のために、どれほどの努力をしてると思ってるんだ?
どうして君は、そんな風に笑うんだ? 僕以外の男相手に。
ここがどこかも忘れて、責めてしまいそうな自分が怖くて、
荒れ狂う感情をなんとか抑えようと、彼女から目を逸らし続けた。
今日はサムの通訳、ということで参加していたけど、幸い彼は日常生活の日本語に問題はない。
料理に集中するふりをしながら、適当に聞き流していた。
すると。
いつの間にか飛鳥の姿がスタジオから消えていて。
トイレにでも行ったんだろうかと見渡した……そして、矢倉の姿もないことに気づく。
何かに突き動かされるように、僕は席を立っていた。
事務所で教えてもらった階段を下りていくと、その先の倉庫、だろうか? 雑多なアイテムが、開店前のスーパーみたいにぎっしりと並んだ部屋には、電気がついていて……声が聞こえた……飛鳥と矢倉のものだ。