ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

亮介を中に入れ、静かにドアを閉める。

「えっと、何か?」

どう聞くべきかと考えながら、デスクにもたれた。
そもそもこんな、探るような真似は僕の趣味じゃないんだけど……

結局、知りたいという気持ちに屈して、口を開いていた。

「君は、飛鳥を昔から知ってるんだったよね?」
「真杉さん? まあね、そうだけど」
「今日のカメラマン……矢倉と飛鳥は、もしかして以前、特別な関係だったのかな?」

聞いた途端、亮介の顔へさっと緊張が走った。
わかりやすすぎる――

「や、えと、やぁあの、その……やっぱ、……気づいた、よな?」

やっぱりね。
ズキンと突くような痛みが胸に走る。

「いやいやいや、そりゃ、たしかにあの頃は、チーム真杉に矢倉あり、っていうくらい、2人は公私ともにゴールデンコンビで、お似合いで、もう結婚間近っていう噂もあったくらいだけど。いやいや、だからそれは! ずいぶん前……ええと、4年? 5年? とか、それくらい前に別れてるはずし、今はもう全然関係ないと思うしっ!」

全然フォローになっていないことに気づかないまま、亮介はしゃべり続け。
気分は瞬く間にズブズブと落ちていく。

「ほら、専務イケメンだし、御曹司なんだろ? 全然他の男なんて気にすることは――」
「どうして2人は別れたの?」

遮った僕の声は、自分でも驚くほど余裕なく尖っていた。
想像通りとはいえ、どうやら僕は思っている以上に、ショックを受けているらしい。

「さ、さぁ、それが謎で。2人とも、示し合わせたみたいに何も言わないから」

示し合わせたみたいに?
言いたくない理由が、あったってことだろうか?

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