ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

時間は、22時半……。

自宅リビングのソファで、僕は何をする気にもなれず、
ただジリジリと飛鳥の帰りを待っていた。

今頃2人は、どんな話をしてるんだろう?
ちゃんと飛鳥は、この部屋に帰ってきてくれるだろうか。今日中に?
嫉妬で狂いそうな自分をなだめながら、また時計を見上げる。

ちょっと……遅くないか?

しかもメッセージは、未読のまま。
電話も通じないなんて。

こんなことは初めてで。
時計の針が進むたび、不安が胸を覆い始める。

本当に、矢倉と一緒なのか?
いやもしかしたら、帰る途中で事故にでもあったんじゃないだろうか。
携帯を無くした? 盗られたとか。ひったくり?

探しに行った方がいいんじゃないか?
でもどこを?
行き違いになったらどうする?

頭を抱えながら、焦燥感と戦い続け。
もう限界だ探しに行こう、と腰を上げた時だった。


カチャカチャ……

かすかな開錠の音。
ホッと――全身から力が抜けた。

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