ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

――そんなことで悩んでたの?


何気ない一言で、カシャン……と自分の中の何かが崩れ落ちた。
大したことじゃない、みたいな言い方に、愕然とした。

“そんなこと”で、私がどれほど悩んでるか、わかる?
考えたことある?

ものすごく悲しくて、つらくて。
いろいろ叫んだような気がする。

あまり覚えてないけど……、今冷静な頭で考えれば、全部八つ当たりだったと思う。
彼は悪くない。

大体、カナディアンの彼が、「そんなこと」のニュアンスまで理解してあのセリフを言ったのか、わからないし。
そこまで求めるのは、酷というものだ。

悪いのは、私。

張さんと会って、あの話を聞かされて。
別れなきゃいけないんだろうかって……

自分の中で、いろんなことを抱え込みすぎて。
限界で。
その苛立ちを彼にぶつけてしまっただけなんだ。

……ほんと、子どもみたい。


冷めきった苦い液体を喉へ流し込み、ぎゅうっと紙コップを両手で握り締めた。

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