ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
女性に話しかけるのが、こんなに難しいと感じたことは今だかつてない。
彼女が、マユミなのか。
金のために男に抱かれるような、そんな女なのか? 本当に?
「マユミ? 遅くなってごめん」
彼女が振り返る。
挑戦的に僕を見据えた漆黒の瞳は……美しかった。
一瞬で、心が囚われてしまうほど。
『見つけた――……』
理由なんてわからない。
でもその時確かに、僕はそう心の中でつぶやいていて。
そして瞬く間に、決意していた。
彼女を僕のものにする、と。
なぜだろう、どうしようもなく欲しかったんだ。
彼女がマユミだというなら、むしろ好都合かもしれない。
おそらく何らかの理由で金が必要なんだろう。
ならば飽きるほど与えて、蕩けるほど愛して。
僕なしでは夜が明けないくらい、身も心も僕に夢中にしてやろう。
そして必ず、犯罪とは縁を切らせてやる。
自分を救ってくれた僕に、彼女はすべてを委ねるだろう。
そのアイディアは、想像以上に僕を舞い上がらせた。
幸い、僕にはそれだけの金もあるし……考えながら、彼女に微笑みかける。
「I’m glad to see you」
それが、飛鳥との出会いだった。