ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
彼の、未来……
言葉の一つ一つが、ひたひたと私に迫ってくるようだった。
好きだから嘘をつく。
好きだから傷つける。
好きだから、別れを選ぶ。
彼のために。
彼の、未来のために。
それもまた、愛するということ――……
みるみるぼやけていく視界に。
「ねえ真杉さん」
すっと綺麗に畳まれたハンカチが差し出された。
「結婚って、難しいわね。好きっていう気持ちだけじゃ、成立しないんだもの」
頷いた途端、受け取ったハンカチにポタリと雫が落ちた。
ポタ、ポタポタっ……
「……ぅっ……ひ、……っ」
ぐっしょり濡れていくハンカチに、嗚咽をも染み込ませながら。
心の中で唱えた。自分の気持ちを確かめるように、何度も。
決めなきゃ。気持ちを、ブレないように。定めなきゃ。
諦めなきゃ。彼のことを。
だって……愛しているから。