ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
結論から言うと、飛鳥はマユミじゃなくて。
こちら側の動きに気づいた本物のマユミに頼まれて、身代わりにされていただけだった。
すでに本気で飛鳥に溺れていた僕は、それが分かった時心の底から神に感謝して。
それから――……変わった、と思う。
友人連中が口をそろえて言うし、自分でもそう思うのだから間違いない。
今回の仕事を最後に、今後は協力できないとSDの本部に申し出た。
父さんの会社に影響が出ないよう、念入りに根回しした後、リーズグループからも距離を取ることにした。
自分の力を試してみたくなったから――彼女のように。
そう。僕は変わった。
それまでだって、完璧に仕事はこなしていた。
でもそれだけだった。
それ以上の努力をすることが、僕には大事なことだとは思えなかった。
日々困らないだけの金と、自由な時間があれば満足だった。
でも飛鳥と出会って、仕事に誇りを持って取り組む彼女に接して。
そんな彼女にふさわしい男になりたいと、強く思うようになったんだ。
ずっとずっと、この先もずっと。
そんな風に考えたことは今までなくて、まだ時折戸惑ったりもするけど……。
再び、彼女の寝顔へと視線を戻す。
きっとこれが、誰かを愛するってことなんだろうな。