ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
身体を固くしてうつむいていると、呆れたような笑い交じりの声がした。
「ったく……お前らは2人そろってまぁ……」
「……はい?」
2人、そろって?
「ま、“あっち”よりは、お前の方がマシみたいだけどな」
マシ?
あっち、って……どっち?
「“あっち”みたいには、なってくれるなよ、お前は」
話はそれだけだ、とばかりに部長は腕を解き。
私の肩をポンと叩くと、ドアへ向かう。
「部長っ!」
「処分はしない。仕事のミスは、仕事で取り返せ。俺のやり方、わかってるだろ」
ひらりと手を振り、廊下へ出て――
ドアが閉まる間際だった。
「拓巳も苦労してるだろうな」
ぼそりと漏れた部長のつぶやきが、なぜか耳から離れなかった。