ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
どんなに位置を移動しても、見えるのは足だけ。
次第に、もっとしっかり彼の姿を確かめたいって思いが強くなる。
ついに。
こうしていても埒が明かない、と焦れた私は、ドアを小さく押し開けた。
ほんの少しだけ。
チラッと顔だけ見たら……と、身体をその隙間へ滑り込ませ――
「きゃっ……」
とっさに口を強く、手でふさいだ。
さもないと、悲鳴をあげてしまいそうな惨状だったから。
床は、書類やファイルが散らばって、足の踏み場にも困るほど。
デスクにもローテーブルにも、テイクアウトのものだろう空き箱やペットボトル、コンビニの袋が散乱してて、おしゃれなインテリアを台無しにしてる。
確かに彼、片づけはあまり得意な方じゃないけど。
それにしたってこれは……と、唖然としながらなんとか隙間を見つけて、そろそろ足を踏み入れ、ソファを覗き込む。
そしてようやく、ライアンの全身を視野に捉えることができた。
皺のよったスラックス、シャツ……歪んだネクタイ。
徐々に視線を上げていき。
ゴクッと――息を飲んだ。
痩せた……。