ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
とっさに口から飛び出した疑問は、このスイートな朝にはふさわしくないものだったかもしれない。
でも、それが僕の中でここしばらくモヤモヤしていたことは事実だった。
だって仕方ないだろう?
付き合い始めて初めてのクリスマスに、
――今年はプレゼントなしのクリスマスにしましょう。
なんて言われたら。
しかも僕はずいぶん前からプレゼントを探していて、ようやく彼女に似合いそうなサファイアを見つけたところだったんだ。
不満たっぷりの僕だったけど、「プレゼントを用意してきたら別れる」なんてビシッと宣言されてしまい、泣く泣くサファイアを諦めた。
一緒に食事して、ホテルのスイートルームで過ごす。
それが不満なわけじゃない。
シェルリーズホテルのプレジデンシャルスイートは、ハリウッドセレブ御用達で、部屋の内装も夜景も最高級だ。
素晴らしいイブの夜は保証されてる……けど。
でもそれじゃ、いつもと変わらないだろう?
彼女からプレゼントがもらえないことは、問題ない。彼女自身が、とっておきのプレゼ……ゴホッ……ええと、まぁそれはともかく。
やっぱり初めてのクリスマスだし、二人の記念になるような、とっておきのものを贈りたかったのに。