ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
ビルを飛び出し、無我夢中で走り抜け、表通りの人込みへと飛び込んだ。
「ちょっとおばさんっ!」
すれ違いざま肩がぶつかった女の子に、「ごめんなさい」と振り返ると。
「い、いえ」と引きつりながら道を譲ってくれた。
よっぽど悲惨な顔、してるのかな。
ドン引きしてるらしい彼女の様子に、ようやく頭が冷えてくる。
ほんと、何やってるんだろう……
そしてとぼとぼと、歩き出した。
胸が痛い。
ギリギリ、音を立てて軋んで、苦しくてたまらない。
全部自分が選んだ道だ。
後悔はしてない。
だから、この痛みは……当然のもの。
私が負うべき罰なんだもの。
早く、彼がシンガポールへ行けばいい。
リーズコーポレーションでどんどん活躍して。
相応しい人と結ばれて、幸せに……
夜空を見上げて、その先に広がるそれぞれの未来を想う。